ピルを飲むとガンになるって本当!?(ピルとガンの関係性について)

ピル(経口避妊薬)

ピル(経口避妊薬)の服用でリスクが高まるガンと低くなるガンがあります。結論から言うと「卵巣がん」「子宮体がん」のリスクは下がり、「子宮頸がん」のリスクは間接的に高まり、「乳がん」の発症リスクは変わりませんが、進行を速めるといった関係にあります。

卵巣がん  → リスクが下がる
子宮体がん → リスクが下がる
子宮頚がん → 間接的にリスクが上がる
乳がん   → 進行が速まる

ピルを飲むことによって「卵巣がん」「子宮体がん」のリスクは減少します。 「子宮頸がん」のリスクは高まりますが、これはコンドームを使わないことでHPV(ヒトパピローマウィルス)の感染確率が高まるため と考えられています。

「乳がん」については、発症リスクに影響はないものの、一度できた乳がんの進行を速めることがあります。

次に、ピルに関係するガンについて個別に見ていきます。

卵巣がん

発見が難しく進行も速い悪性度の高いガン

卵巣は身体の内部にある器官ですので、細胞を採取しての卵巣がん検診というものが事実上できません。また自覚症状が少なく、進行も早い厄介なガンです。

診断は超音波(エコー)によって行うことになります。また、腫瘍マーカーを使った検査もできますが、異常値だからといってガンだとは言い切れず、正常値だからガンではないとも言えない、発見するのが大変難しいガンです。

近年卵巣がんの発症率が上がっています。 戦前は多産であったため女性の生涯の月経数は40回程度だったのに対し、現在は少子化などの影響で平均月経数は400回にも増えています。

卵巣がんのリスクが高い人

 妊娠や出産の経験がない人
 家系に卵巣がんになった方がいる人
 初経が早く、閉経が遅い人
 チョコレート嚢胞がある人
 高齢の人
 肥満の人
 タバコを吸う人

発見が難しいとは言っても、エコーや腫瘍マーカーでチェックすることはある程度意味があります。特に上の項目に当てはまる方はできるだけ定期検査を受けた方がいいでしょう。

ピルによる卵巣がんリスク低減

卵巣がんは、ピルを服用すると発症確率が下がります。 10年の服用で50%も卵巣がんの発症リスクが低下します。ピルの服用をやめてもガン抑制効果は持続します。

卵巣がんは繰り返し起こる排卵によって卵巣の壁がダメージを受けることが原因のひとつ。ピルにより排卵が抑制されるため、卵巣への負担が減ることにより卵巣がんになりにくくなります。

ときどき「ピルを飲むと不妊症になるのでは?」 という心配をされる方がいますが、ピルの服用は女性の身体への負担を和らげる ことになり、妊孕力に影響を与えることはないとデータでも明らかになっています。

参照:Havrilesky LJ, Moorman PG, Lowery W, et al. : Oral contraceptive pills as primaryprevention for ovarian cancer:
a systematic review and meta analysis. Obstet Gynecol 2013;
122: 139-147 (II))
Havrilesky LJ, Gierisch JM, Moorman PG, et al.: Oral contraceptive use for the primary prevention of ovarian cancer.
Evid Rep Technol Assess (FullRep) 2013; 212: 1-514 (II)

子宮体がん

子宮内部にできるガン

子宮体がんは子宮内部(妊娠する場所)に発生するガンです。子宮の奥にあるため、検査がやや難しいです。子宮体がんは40歳以降発症する確率が高くなり、50歳代に最も罹りやすくなります。

症状としては「生理の時期が乱れる」「生理でもないのに出血する」「おりものの回数が増える」などです。

ピルによる子宮体がんリスク低減

子宮体がんは子宮内部が厚く成長する「子宮内膜増殖症」から発展してガンになります。ピルは子宮内膜の成長を抑える作用がありますので、ピルによって子宮体がんのリスクは下がります。

3年以上の服用で50%,10年以上では80%,子宮体がんのリスクが下がり、ピルを止めても20年は効果が持続すると言われています。

参照:Schlesselman JJ: Risk of endometrial cancer in relation to use of combined oralcontraceptives. A practitioner’s guide to meta-analysis.
Hum Reprod 1997; 12: 1851-1863 (II)

子宮頚がん

子宮の入り口に発生するガン

子宮頚がんは子宮の入り口である「子宮頚部」に発生するガンです。位置的に発見・検査ともに行いやすいガンで、比較的予後がよいガンです。

子宮頸がんは性交渉によって感染する「HPV(ヒトパピローマウイルス)」が大きな原因となります。通常、9割の確率で免疫機構がHPVを排除しますが、残る1割が定着を許してしまいます。

HPVは早期の段階で治療すれば完治できます。

ピルとの関係

ピルが直接子宮頸がんを引き起こすことはありません。 問題なのが、ピル服用者はコンドームを使用しない傾向にあることです。ピルは避妊薬ではありますが、性病感染を防ぐ機能は持っていません。
こうした事情によって、ピルは「間接的に」子宮頸がんのリスクを増やしてしまうのです。

子宮頸がんワクチン

HPV(ヒトパピローマウイルス)にはワクチンがあります。10代前半の女子に摂取が望ましいとされています。子宮頸がんワクチンは現在、その年に中学1年生になる女の子から高校1年生の女の子に定期接種となっています。

参照:International Collabortation of Epidemiological Studies of Cervical Cancer.: Cervical cancer and hormonal contraceptives: collaborative renalysis of individual data for 16573 women with cervical cancer and 35509 women without cervical cancer from 24 epidemiological studies.
Lancet 2007; 370: 1609-1620 (II)

乳がん

女性のガン死の9%は乳がん

女性に多いガンですが、男性はならないかというとそういうわけではありません。男性の乳がんの罹患率は女性の1%であるとされています。しかしやはり女性に多く、乳がんは女性のガンによる死亡全体に対して9%を占めます。

マンモグラフィ検査や、自分でしこりを見つけたなどで発見されることが多いです。

ピルと乳がんの関係

ピルが乳がんの発症率を上げるかについてはさまざまな調査結果が報告されていますが、現時点では「ピルが乳がんの発生率をあげることはない」という考えが一般的です。

しかしピルは、発症してしまった乳がんの進行を進める可能性があるといった見解があるため、乳がんを患っている方は処方ができず、また5年以内に患ったが完治した方も慎重投与とされています。心当たりがある方は低用量ピルの服用前に必ず医師とご相談ください。またそうでない方も定期的にがん検診に行くことをお勧めいたします。

肥満は乳がんリスクを高める?

閉経後の女性の肥満は乳がん発生確率を確実に上げます。一方、閉経前の女性なら、海外ならむしろリスクを下げるとも言われますが、日本人対象の試験では閉経前であっても肥満は乳がん発症率を高めるという結果が出ています。

しかし、肥満は「心臓病」「脳卒中」「糖尿病」などの生活習慣病の原因となるので、「標準体重」を維持することが大切です。

参照:Charlton BM, Rich-Edwards JW, et al.: Oral contraceptive use and mortality after 36 years of
follow-up in the Nurses’ Health Study: prospective cohort study. BMJ 2014; 349:g6356 (III).

ガンについてまとめ

女性のガンでの死亡人数は多い順に「大腸」「肺」「膵臓」「胃」「乳房」となっています。
また、罹患数は多い順に「乳房」「大腸」「胃」「肺」「子宮」になります。

生涯でがんに罹患する確率は、男性62%(2人に1人)、女性47%(2人に1人)に登ります。

ピルの服用については、ガン全体に対してはメリットの方がデメリットより大きいです。 もともと各ガンに罹る率など少ないのだからピルの影響なんて無視してしまえばよいのでは? などというのはあまりに安易です。リスク「30%低下」「50%低下」というのはとても大きな数字であると認識していただきたく思います。

年齢に応じて、なりやすいガン、なりにくいガンを知っておくことは大事です。また、定期検診を受けることも大切です。特に乳がんは死亡数こそ第5位ながら、罹患数(病気になる数)では女性のガンのトップに来ています。

忙しい、面倒だといった理由からガン検診を受けない方が多いですが、ピル服用のあるなしに関わらず、定期検診は積極的に受けることを強くお勧めします。

がん検診

がん検診には「対策型検診」と「任意型検診」の二つがあります。

対策型検診とは公的な予防対策で、無料か一部自己負担でがん検診が行えます。 現在対象になっているのは「胃がん検診」「大腸がん検診」「肺がん検診」「乳がん検診」「子宮頸がん検診」です。

任意型検診は医療機関などが任意で行うもので全額自己負担になりますが、気になるところを診てもらえるため、婦人病関係ではできるだけ行うことをお勧めします。

ガンとタバコ

タバコによって発症率の上がるガンは肺がんだけではなく、ほぼすべてのガンの発症リスクが高まります。特に「肺がん」「食道がん」「胃がん」「膵ガン」「子宮頸がん」のリスク増大が確実視されています。

それだけでなくピルを内服している人がタバコを吸うと「血栓症」のリスクが高くなります。 そもそも35歳以上で1日15本以上タバコを吸っている人はピルの服用ができません。

たとえその基準外だとしてもやはり血栓症のリスクは高まりますので、ピルを服用するなら禁煙することが大切です。

まとめ

ピルによってリスクが減少するガンに「悪性度の高い卵巣がん」「深部に発生する子宮体がん」があることを述べてきました。

注意しなければならないのが「コンドームなしのセックスによるHPV感染による子宮頸がん」「進行が速まる乳がん」です。こちらはピルを使うことによって起こる問題です。

全般的に、ピルはガンに対してメリットが大きいと言えるでしょう。

ただ、他のガンの定期的な検診を受けることはもちろん、特に発症率が女性のガンの内ではトップに来る「乳がん」の検診を怠らないようにすることが大切です。

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