ピル(避妊薬)の服用は卵巣がんのリスクを軽減するって本当?

ピル(経口避妊薬)

ピルの服用により「卵巣がん」「子宮体がん」のリスクが軽減することが分かっています。
卵巣がんは発見しにくく、異常を感じた時にはがんが進行してしまっていることが少なくありません。
ここでは卵巣がんとピルの効果について記します

ピルとがんの関係

ピルの服用によって、「卵巣がん」「子宮体がん」の発症率が下がります。
逆に、「子宮頸がん」の発症リスクは高まります。
「乳がん」については発症にピルは影響しませんが、乳がんを発症してしまっている人がピルを飲むと進行を早める可能性が指摘されています。

ピルの服用でリスクが軽減されるがん①「卵巣がん」

「卵巣がん」は、サイレントキラーと呼ばれる自覚症状が起こりにくいがんで、進行も早いので、発見したときにはかなり進行しているということが多い、危険ながんです。
ピルを服用することで発症のリスクを下げることができます。

ピルの服用でリスクが軽減されるがん②「子宮体がん」」

「子宮体がん」は、子宮内膜から発生するがんで、子宮内膜が分厚く成長する「子宮内膜増殖症」から発症し、がん化が起こります。
初期症状として「生理の周期がおかしくなる(月経不順)、生理期以外で性器から出血する(不正出血)、おりものの回数が増える、などがあります。
ピルは子宮内膜の成長を抑える効果があるため、この子宮体がんの発生率を下げます。

ピルでリスクが高まるがん「子宮頸がん」

子宮の出入り口にあたる「子宮頚部」に発生するがんです。
進行が遅く、発見もしやすいがんです。
性交時にヒトパピローマウイルスに感染することが子宮頚がんの発端になります。
性交を経験したことのある女性の80%が感染していると言われていますが、感染しても多くの場合免疫機構がウイルスを体外へ排出します。
ピルを使うことで避妊具なしで性交することが多くなるため、がんのリスクが増加すると考えられます。

ピルを使うことで「子宮頸がん」にはなりやすいと言えますが、ピルそのものが子宮頸がんを起こすということではありません。
また子宮頸がんは比較的進行が遅く、発見もしやすいがんです。

一方、ピルの服用でリスクが下がる「卵巣がん」は、進行が極めて速く、自覚症状も乏しい発見しにくいがんです。
見つかった時にはすでに手遅れ…というケースが多く見られます。

ピルは間接的に「子宮頸がん」のリスクは高めるかもしれませんが、非常に厄介な「卵巣がん」の発症を抑えることはほぼはっきりしています。
その他にも、月経困難症や子宮内膜症、生理に関する様々な良い効果がピルにはありますので、ピルの服用にはもう少し積極的になってもよいかと思われます。

先進国では日本は異常なくらいピルの使用率が低いです。
フランスで41%、ドイツ37%、イギリス28%などに比べて、日本は1~2%と、圧倒的な差があります。
その為なのか、卵巣がんの発症率は諸外国に比べ高値です。

ピルと卵巣がんについて

「卵巣がん」については、ピルを1年服用すれば5%、10年以上で50%発症が減ります。
この効果はピルの服用を止めてからも、少なくとも20年は続きます。

「子宮体がん」では3年以上で50%、10年以上で80%も低下します。
こちらも服用を中止したのち20年以上効果が続きます。

卵巣は、排卵をするたびにストレスを受けます。
ピルを服用すると、脳の下垂体から出る卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの分泌が抑えられ、排卵が起こらなくなります。
そのため、卵巣の受けるストレスが下がることが、卵巣がん抑制につながるのです。

卵巣がんになるのは子供を産まないライフスタイルが関係していると考えられています。
現代の女性の生涯月経回数は、多産だったころの35~40回前後から、その10倍の400回程度になります。

また、月経が増えた分、子宮内膜症にもなりやすくなります。
月経数の増加で生じる子宮内膜症を介して卵巣がん発症に至ることもあり、ここでもピルは有効です(ピルは子宮内膜症を抑える)。

子宮内膜症が卵巣に生じたときに形成されるチョコレート嚢胞(血液がチョコレートのように溜まった嚢胞)の1%程度ががん化すると言われています。
一般的な卵巣がんの発生頻度は5,000人~10,000に1人の割合ですので、かなりな高値だといえます。

卵巣がんとは?

良性か悪性かにかかわらず、卵巣の腫瘍は症状がほとんど出ないため、初期の内に発見することが非常に困難です。
腹部膨満感、腹痛、頻尿、しこりといった症状を自覚して病院へ行った時にはすでにかなり進行している場合が非常に多いです。
進行が非常に速いことが知られており、60%以上の人はがんが腹腔内に散らばっていたり、リンパ節やその他の臓器に転移した状態で見つかります。

卵巣の病気には痛みなどの自覚症状がない上、子宮がんのような検診制度もありません。
ですので、子宮がん検診の際などに卵巣の検査も同時に行っておくことが勧められます。
早期発見は困難ではありますが、エコーや画像診断を用いた婦人科の検査である程度は分かります。

卵巣がんの種類

卵巣にできる悪性腫瘍は、10~20代に多い「卵巣杯細胞腫瘍」と40~60代を中心に発症する「上皮性卵巣がん」があります。
卵巣杯細胞腫瘍は卵巣の中の胚細胞にできるがんです。
発生率が低く、抗がん剤がよく効くため、どちらかの卵巣を温存し、妊娠能力を残した治療が主に行われます。
上皮性卵巣がんは、卵巣を覆う上皮にできるがんで、卵巣にできるがんの90%を占め、普通卵巣がんと言えばこちらを指します。

リスクが高い人
  • 妊娠・出産の経験がない方
  • 家系に卵巣がんを発症した人がある方
  • 初経が早く・閉経が遅い方
  • チョコレート嚢胞がある方
  • 高齢の方
  • 肥満の方
  • タバコを吸う方

などが高リスクだと言われています。

卵巣は腫瘍ができやすい

卵巣は人体でも最も大きな腫瘍ができる臓器です。
もともと親指大の臓器ですが、卵巣がん患者では48㎏もの腫瘍ができた例もあります。

「卵巣嚢胞」に代表される良性の腫瘍もできやすく、卵巣の腫瘍の90%は良性のものです。
しかし、50歳以上では、卵巣にできる腫瘍の内50%が悪性のものになります。

卵巣がんは診断がしにくい

卵巣は骨盤の奥にある臓器なので、膣から器具を入れての細胞採取ができません。
実際に摘出して病変を顕微鏡で調べないと、良性なのか悪性なのかわからないということもあります。

超音波・CT・MRIなどの画像診断で腫瘍の大きさや種類を検査します。
また、腹水や胸水の有無、明らかな転移の有無などでがんの進行具合を調べますが、1㎝以下の小さな病変は確認できないことがあります。
血液検査としての「腫瘍マーカー」で良性・悪性を診断することもありますが、良性でも高値、悪性でも低値ということがあり、決定打とならない場合があります。
腹水や胸水が溜まっている場合は、採取して、がん細胞があれば確実にがんであると診断されます。

卵巣がんのステージ

Ⅰ期:がんが片側あるいは両側の卵巣にだけとどまっている場合
Ⅱ期:がんが卵巣の周囲(卵管・子宮・直腸・膀胱など)の腹膜に進展している場合
Ⅲ期:がんが上腹部、またはリンパ節に転移している場合
Ⅳ期:がんが遠隔部位に転移しているか、あるいは肝臓実質に転移している場合

5年生存率は、Ⅰ期で87.4%、Ⅱ期で66.4%、Ⅲ期で44.2%、Ⅳ期で28.3%となります。
ただ、がんの治療は日進月歩で進んでおり、生存率も年々高くなってきています。

卵巣がんの治療

外科手術

手術で病巣を切り取ります。
原発巣だけでなく、転移した部分も取り除きます。
最も基本的ながんの治療法です。
場合によっては化学療法である抗がん剤治療を先に行ってから手術をする場合もあります。
通常は、卵巣全摘出、あるいは卵管・子宮を含めた摘出手術が行われます。
さらにリンパ節や周辺臓器も転移を防ぐため同時に摘出するケースが多いです。

抗がん剤(化学療法)

抗がん剤を使って、原発、転移部を問わず、全身のがんを総攻撃する治療です。
卵巣がんは比較的抗がん剤が効きやすいタイプの悪性腫瘍ですが、抗がん剤は健常な細胞にも多大な被害を出す治療法です。
嘔吐・脱毛など、副作用という言葉では足りないくらいの損害を身体は被ります。
しかし、この抗がん剤も日々進歩しており、有効な治療法であることに変わりはありません。

放射線治療

腫瘍の拡大を防ぐ、あるいは縮小させるために使われる方法ですが、抗がん剤を主とする治療が多くなっています。
骨や脳への転移がある場合に使用されることが多いです。

免疫細胞療法

免疫を担う、患者本人の細胞を取り出して大量培養し、体内に再投入する方法です。
副作用がほとんどない、新しい治療法です。

まとめ

ここまでみてきたように、卵巣がんは発見が難しく、進行速度の速いがんです。
そして、排卵の回数が増えるほど卵巣がんの発生リスクは高くなります。

ピルを服用することで排卵回数を抑えることができます。
また、子宮内膜症の予防のためにピルを使うのもよいことだと思われます。

最近では「ヤーズフレックス」という、最長120日間服用できる超低用量ピルの処方も受けられます。
卵巣がん防止のためだけでなく、月経困難症、子宮内膜症が気になる方も一度ピルの服用を検討されてはいかがでしょうか。

そして、ピルの服用の有無にかかわらず、定期的ながん検査を受けることをお勧めしたいと思います。

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